ひらく、積ん読、かさねとく。

ただの読書録って言ったじゃない

【抜粋】「贈与論 他二篇」(2014)マルセル・モース,森山工訳 ②

ゲルマン世界「全体的給付の体系」
法的・政治的・経済的・宗教的体系
“クラン(特定の始祖から男系もしくは女系による単系の共通出自をたどると認知している人々の集団)どうし、
家族どうし、個人どうしがあらゆる種類の給付と反対給付を絶えず交わし続けることによって相互に結びついている。
それらの給付も反対給付も、無償の贈与やサービスのかたちで通常は行われる。”

全体的給付を構成する義務
・受け取った贈り物に対してお返しをする義務
・贈り物をおこなう義務
・贈り物を受け取る義務

“消費すること、お返しをすることに関わる一連の権利と義務がある。
この権利・義務は、提供することそして受け取ることに関わる権利・義務に関連している。
(中略)すべての物事は、受け渡しとお返しの対象になるということだ。”

p.242 小さなカワウソの話
“財の分配であるポトラッチは、「認知=識別=承認」(ルコネサンス)という根源的な行為
人々が首長なり息子なりを「認知=識別=承認」し、「感謝の念をいだく」(ルコネサン)ようになる”

p.298 第一の結論
“クランからクランへ、家族から家族へという「全体的給付」の段階は既にこえたにもかかわらず、
まだ純粋な意味での個人の契約には到達しておらず、お金が流通する市場や、本来的な意味での売買や、
そしてとりわけ、品位検定を施された貨幣で価格をあらわすという観念には到達していない諸社会がある。
贈与=交換というこの原理は、こうした段階の諸社会の原理であったに違いないと考えることができるのである。”